(46) Jazz for the Carriage Trade (1956)/ George Wallington

ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード

ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード

ジョージ・ウォーリントンは、白人ながら生え抜きのバップ・ピアニストとしてガレスピーやパーカーとも共演しているが、ピアノの腕前自体は可もなし不可もなしというところか?
この人がジャズ史に名を残したのは、『クールの誕生』に取り上げられた「God Child」という曲の作曲者として、それから50年代に残した『Live at Cafe Bohemia』(55)とこの『Jazz for the Carriage Trade』(56)の2枚のハード・バップ・アルバムのおかげである。
『Live! At Cafe Bohemia』の方は、若きジャッキー・マクリーン(as)とドナルド・バード(tp)の溌剌プレイが聴けるし、マイルス・コンボ入隊前のポール・チェンバースのベースも聴ける。
こっちの『Jazz for the Carriage Trade』は、ドナルド・バードはそのままだがアルトがマクリーンからフィル・ウッズに変わっている。
ウッズはオリジナルを2曲提供しているし、パーカー風の流暢なプレイを展開するが、翌年ジーン・クイルと組んでからの豪放な演奏と比べると、ややノリが単調でエモーションのうねりのようなものが感じられないような気がする。というよりも、これがこのバンドのノリなのだろうか?
この頃のドナルド・バードのラッパは、イヤホンなどで聴いているとちょっとショボイ感じだが、久しぶりにまともなスピーカーで聴いてみたら、なかなかブリリアントで心地よい響きだ。バードはこの年、「バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル」というワンホーンの佳作も吹き込んでいるが、ブラウニー亡き後のトランペット・シーンを先導する才能を垣間見せていると言える。
ウッズにしてもバードにしても、この時期のトップ・レヴェルの腕前だし、このコンボ自体も56年の時点でのスタンダードなハード・バップ・コンボと言えるが、逆に言えば、可もなし不可もなしで、度肝を抜くような感興は感じられない。そこがウォーリントンというリーダーの資質ということか?


50年代の100枚リスト