(44) Grand Encounter (1956)/ John Lewis

グランド・エンカウンター

グランド・エンカウンター

僕が一番ジャズにはまっていた70年代後半は、秋吉敏子ルー・タバキンのビッグバンドのピークだったから、好むと好まざるとにかかわらず、このバンドの音はよく耳にした。僕は、このバンドでバリトンを吹いていたビル・パーキンスのイメージが強く、ずっとバリサク奏者だと思っていた。しかも、この人があの『Grand Encounter』で悠々たるテナーを吹いていたビル・パーキンスと同一人物だと気づいたのはずっと後になってからだった。


70年代以降のビル・パーキンスのプレイにはそれなりにモダンな(すなわちコルトレーン的な)要素が加味されていたように思うが、56年のこの演奏ではあまりにスタン・ゲッツ・・・というよりは、レスター・ヤングの絶頂期のトーンはこんなだったろう、と思わせるようなクールで奥行きのある絶妙な音が聴こえてくる。


もう最初からビル・パーキンスのテナーを聴くためにあるアルバムになっていて、ジム・ホールのギターを全面的にフューチャーした「Skylark」を除けば、聴き終わって印象に残るのはひたすらパーキンスのテナーの音ばかりなのだ。
で、そういえばピアノは誰だったんだっけ・・・と一瞬頭が飛んでしまうほど、ジョン・ルイスの影が薄い。ほとんど空気のように、透明化してしまっている。これがルイス得意の透明人間技なのである(^o^;
ここでのルイスは、フロントに立てたビル・パーキンスの才能と個性を100%引き出す事に徹していて、おそらく99%引き出す事に成功している。これはスゴイことだ。
よく「才能の120%」を引き出してしまうチーム・リーダーがいるが、それは別のホールのグリーンにオンしてしまったのであって、それを賛美するのは論外である。
ジョン・ルイスがパーキンスの才能を99%引き出したと言ったのは、56年におけるパーキンスの実像をその「限界」を含めて見事に把握していたということであって、それゆえ、超一流選手とは言えないパーキンスが、自己の才能の最高レヴェルにおいて、スタン・ゲッツレスター・ヤングといった巨匠に肉薄してしまうのである。


こう比喩的にしか言えないのがもどかしいが、こういう風にしか言えないジョン・ルイスの才能というものが確かにある。確かに・・・


50年代の100枚リスト