(39) Sonny Stitt Plays (1956) / Sonny Stitt

ソニー・スティット・プレイズ

ソニー・スティット・プレイズ

どうやら僕はこのアルバムとはすれ違いの運命にあるようだ。
学生時代、このアルバムのLPを友人から借りてカセットに録音してしょっちゅう聴いていたのだが、そのうち自分で買おうと思った時には廃盤状態だった。CD時代になってからはどうもこのアルバムはずっと国内盤がリリースされていなかったようで(僕が気づいていなかっただけかもしれない)、3〜4年前に紙ジャケ盤で出ているのを発見して嬉々として買い込んだのだった。これでやっとこのアルバムを自分の手にしたのだが、その直後(聴いたのはたぶん1回)、若いジャズ初心者の友人から「サックスの50年代のオススメを何枚か聴いてみたい」と請われ、ついこのアルバムも貸してしまった。彼女はその後まもなく沖縄に定住してしまい、このアルバムは戻って来ずじまいになっている。


この「50年代の100枚」を選定していてこのことに気づき、この際新たに手に入れようと思ってCD屋やアマゾンで捜したが上記の紙ジャケ盤はまたしても廃盤。ネットで外盤を注文したのだが、1ヵ月後に「在庫切れでした、代金はお返しします」のメール。というわけで、追いかけても追いかけても逃げていくこのアルバムなのだった。
で、数十年前の(+4年前に1回だけ聴いた)記憶だけでレヴューするのもなんだし、今回は止めておこうかと思ったのだが、先般、このアルバムの中の半分が収録されている珍しいCDを偶然手に入れた。


Sonny Stitt & Hank Jones : Sonny Stitt & Hank Jones: The Complete Original Quartet Recordings』というアルバムでEUの Lone Hill Jazz という再発レーベルから出ている。『Sonny Stitt Plays』と『Sonny Stitt with the New Yorkers』(1957)、『Stitt in Orbit』(1962)の3枚から、スティットがハンク・ジョーンズ・トリオをバックに演った音源だけを集めている。で、『Sonny Stitt Plays』のうち4曲はフレディ・グリーンのリズム・ギターが入っているからこの分をオミットして、残りのクインテットで演った4曲を収めているわけだ。
4曲だけとはいえ「If I Should Lose You」や「My Melancholy Baby」を聴けたのは幸いだったし、『With the New Yorkers』の方にも「Cherokee」、「Body And Soul」、「Bird's Eye」等の名演が入っているので、50年代のスティットのワンホーン演奏を聴くには超お得用のアルバムだ。(『Stitt in Orbit』は付録と考えてよい)
ところで、このアルバムのデータを見ていたら、『Sonny Stitt Plays』の録音は1955年の12月となっていて、今までのデータより10ヶ月も早いのだが、どっちが正しいんだろう?


スティットのアルトは、なんだかんだ言っても明らかに(ほとんど確信犯的に)チャーリー・パーカーのイミテーションであって、演奏スタイルについて似ているの似ていないの議論は愚としか言いようがない。が、彼はパーカーを模倣したが、パーカーの音楽のコアにあるアヴァンギャルドな部分や曰く言いがたいドロドロしたモノ(なんのこっちゃ?)までは模倣できなかった、あるいは模倣しなかった。おそらくパーカーのパーカーたる核の部分を捨象して、表層をすいすいと滑走することで、最後までエクセレントなミュージシャンであり続けたのがソニー・スティットだった・・・スティットの「Cherokee」を聴いていてそう思った。
ある意味パーカーの仕掛けた罠のドツボにはまってしまったエリック・ドルフィーオーネット・コールマンと比較して、スティットはあくまでエクセレントなのだ。


50年代の100枚リスト