(30) The Jazz Messengers at the Cafe Bohemia (1955) / Art Blakey
- アーティスト: アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
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ほとんど類人猿的な野獣的な顔、今にもヨダレが垂れてきそうな半開きの口、どろんと澱んだそれでいて獲物を狙うような危ない目・・・TVに写っていたブレイキーの表情は僕にとってはあまりにも異形のエイリアンだった。彼が叩くドラムスも、ジャズのジャの字もわからない僕にとっては、ただ怒りにまかせてぶっ叩いているだけの喧騒そのものの鬱陶しいサウンドにしか聴こえなかった。
僕のブレイキーに対する偏見とJM食わず嫌いはこの時から始まっていて、その後ジャズにのめり込んでからもJMはもちろん、JMの周辺を去来したミュージシャン達---ハンク・モブレー、ボビー・ティモンズ、ビル・ハードマン等---の参加アルバム(主にブルーノート)もあまり聴かなかった。
いままで50年代前半の流れをざっと眺めてきたが、モダン・ジャズ隆盛のキー・ポイントとなる重要な場面でいつもブレイキーはドラムを叩いていた。そして、このJMの実質的デビュー・アルバム以降30数年に渡ってこのグループを維持し続け、幾多の俊英ジャズ・メンを輩出していくわけだが、このブレイキーのリーダーシップと先見の明が彼の人格と演奏のどこから発しているのか、僕は理解できてないように思う。というわけで、今年の後半はJMとその周辺を少しは聴いてみようと思っているので、その辺は宿題ということで・・・。
で、この『カフェ・ボヘミア』を今回はじめてまともに聞いたのだが、モブレーのモゴモゴしたプレイはやはりなんだかな〜という感じだが(2曲のモブレー作の曲の出来は秀逸・・・)、驚くべきはケニー・ドーハムのトランペット。この人こんなにずごい人だったんだ!
ドーハムというと、僕の中ではいつも「二番手」っていう感じが強い。48年にマイルス・デイヴィスがパーカー・バンドを去った時の後釜がドーハムだったし、JMの初代トランペッターも第一候補はクリフォード・ブラウンだったに違いなく、「バードランド」のセッションの後ブラウンがマックス・ローチに引っこ抜かれたためにやむなく?白羽の矢が立ったのがドーハムだった、というのが実情だろう。そして、そのブラウニーが急死した後のマックス・ローチのバンドの後釜もやはりドーハムだった。
そんな救援投手的なイメージの強いせいか、あるいは『静かなるケニー』といういささか地味なワンホーン・アルバムが定番になってしまったせいか、ラテン・リズム炸裂の『アフロ・キューバン』(1955)や J.R. モンテローズとの『ザ・ジャズ・プロフェッツ』(1956)、『カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム』(1956)といったリーダー作でのハード・バップ史に残るアグレッシヴな快演が、なんだか影の薄い存在になっている感がある(最近再評価されているという話も聞くが・・・)。
なことを言ってる僕も、ドーハムのこの辺のアルバムは昔ジャズ喫茶等で何度か聴いたぐらいで、自分で買ってじっくり聴いたことがないから、これも宿題ということで・・・『静かなるケニー』をレヴューする頃までには、幾つか聴きこんでみようと思っている次第。
なお、このJM創成期のブレイキーとホレス・シルヴァーとの関係や、ドーハムを含むJM関連プレイヤーについては、僕なんかより、Bird of Paradiseにおもしろい話題がたくさん載っているので、是非そちらを参照くださいませませ・・・。