(26) Courts the Count (1954) / Shorty Rogers
ショーティ・ロジャース・コーツ・ザ・カウント (紙ジャケット仕様)
- アーティスト: ショーティ・ロジャース
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/06/26
- メディア: CD
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"Courts the Count"とは伯爵様の恩顧を賜る、伯爵の御機嫌をとる、といった意味合いだと思うが、"伯爵"とはもちろんカウント・ベイシー御大のことである。30〜40年代のベイシー楽団のヒット・ナンバーを、ロジャース流すなわち西海岸流のアレンジとソロでカヴァーするというのがこのアルバムの趣向で、なかなか楽しいアルバムに仕上がっている。
村上春樹は、「カウント・ベイシーの音楽は事情が許すかぎり大きな音で聴いたほうがいい」(ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫))と書いたが、その所以は、ベイシーのポロンポロン・ピアノから急転直下フォルテ・シモの強烈なブラス・アンサンブルへと至るダイナミズムと、身体ごと持っていかれるような怒涛のスウィング感こそがベイシー・サウンドの肝であるからである。日本でも、アマチュアからプロまでベイシーをレパートリーとするバンドは多いが、この辺の肝さえ押さえておけばベイシー風のサウンドは一見出しやすい。
一方、ロジャースやジェリー・マリガン等のウェスト・コースト流のアレンジは、あまり音の強弱を強調せず、むしろ全篇メゾ・フォルテの流れの中で、個々の楽器の組み合わせの妙と独特のアンサンブル・カラーを出すことを主眼としている。
ベイシー・サウンドからその肝である「音量のダイナミズム」と取り去ってしまえば、下手をすれば平板で退屈なサウンドと化する可能性があるが、そこは編曲名人ショーティ・ロジャースのこと、ヴァラエティーに富んだ編曲手法を駆使して、ベイシーの泥臭いナンバーを都会的なセンス溢れるウェスト・コースト・ジャズに料理し直している。
メンバーも、このロジャースのアレンジにぴったりのソリスト揃いで、ズート・シムズ、バド・シャンク、ハーブ・ゲラー、ジミー・ジュフリー、ビル・ホールマンらのサックス隊が繰りひろげるアンサンブルとソロは、ベイシー・ナンバーに乗った「フォー・ブラザーズ」ってな感じだ。
さすがに、メイナード・ファーガスンやコンテ・カンドリを中心にしたブラス・セクションは強力で、ベイシーの金管隊とは全く毛色の違う風圧で咆哮する。
白いベイシーってのもなかなか楽しいのだ!