(22) Jay & Kai (1954) / J.J.Johnson & Kai Winding

ジェイ・アンド・カイ

ジェイ・アンド・カイ

公私に多忙っていうやつで、チョットご無沙汰になってしまいました(^o^;
今日は、トロンボーンのJ&K。


スライドを腕で伸縮させて音程を変えるといういささか原始的な構造からして、バップ的な高速パッセージへの対応が恐ろしく困難だったトロンボーンという鈍重な楽器を、怒涛のスーパー・テクニックでモダン・ジャズのソロ楽器にのし上げたパイオニアがJ.J.ジョンソンだった。
J.J.のプレイは、基本的には低音を捨て、第3ポジションまでで勝負できる高音を多用して、バルブ楽器を凌駕するほどの速吹きを達成したが、同時に、強烈なアタックと的確なタンギングで、本来ソフトで茫洋としたトーンのこの楽器にメリハリを与えた。
ビ・バップ期からハード・バップ初期にかけて、J.J.のテクニックとアドリブ・センスはほとんど他を圧倒していたから、パーカー、ガレスピー、マイルス、ロリンズ等のジャイアンツに重用された。この時期、2管・3管編成でトロンボーンを使おうと思った瞬間に頭に浮かぶのがJ.J.ジョンソンの名前だったろう。


一方のカイ・ウィンディングは、白人奏者のご多分に漏れず、スタン・ケントン楽団で音楽センスを磨きつつ人気を博していった奏者だが、基本的にはJJ流のバップ奏法をマスターしながらも、トロンボーン本来のグリッサンドハーフトーンといった特徴的な技法や低音域を比較的多用するプレイヤーで、ある意味J.J.とは対照的な部分が見える。
例えば、フィル・ウッズジーン・クイルの双頭バンドなど、同一楽器の競演ではどっちのプレイか聴き手を悩ますことも多いが、このJ.J.とカイの二人のプレイは比較的特長がはっきりしていて、ブラインド・テストのネタにはなりそうもない。


この二人の演奏テクニックもさることながら、J.J.はバップ期から名作編曲者として有名だったし、カイ・ウィンディングも西海岸仕込みのモダンなアレンジをする人で、後には共にTVや映画の仕事やスタジオセッションのアレンジャーとしても活躍している。
このアルバムは、この二人がチームを組んで初のスタジオ・レコーディングだが、J.J.ジョンソンソンが幾つかの曲とほとんどのアレンジを提供している。J.J.のコンポーザー&アレンジャーとしての才能が端的に出たアルバムでもある。*1


例えば、①「バーニーズ・チューン」。ケニー・クラークの軽快なシンバルに乗ったテーマのトロンボーン・アンサンブルが小気味いい。トロンボーン・アドリブのお手本のようなJ.J.のソロのあと、ウィンディングのちょっとコミカルで味のあるソロ。次のWally Cirillo という人のピアノはややノリが悪くて残念・・・。そのあと、トロンボーン・アンサンブルやクラークとの8バース、ミンガスのベース・ソロ等をうまく配したセカンド・リフからエンディングへ・・・この辺のアレンジがすこぶる楽しく、バップ期の単調なアレンジとは一線を画す要素だ。
それから、②「ラメント」は有名なJ.J.のオリジナル・バラッドだが、この時代としては非常にモダンな曲とアレンジだし、ここでのJ.J.のプレイは歴代のトロンボーンのバラッド・アドリブの中でも白眉のものだと思う。
他に、⑦「リフレクションズ」というかなり現代音楽的な作品が収録されているが、今からして思うとこのような実験作は蛇足の感が強い・・・。


J.J.ジョンソンソンは、プレイヤーとしてもアレンジャーとしても、後々までジャズ界のバーチュオーゾとして君臨したが、晩年は癌と転移の痛みに苦しみ、2001年2月4日、インディアナポリスの自宅で自ら命を絶った。享年77歳。


50年代の100枚リスト

*1:なお、例によってこのセッションとは関係のない2曲が追録されているが、これは蛇足だ。それから、クレジットには10曲中9曲をJ.J.の作曲としているが、明らかに記載ミス。数曲はJ.J.の曲だが、あとは・・・チョット調べる暇がありませんが・・・。