McLean, Forever !

イッツ・タイム

イッツ・タイム

高校2年生ぐらいの時だったか、友人と二人で初めてジャズ喫茶なるものに入った。煙草の煙が充満する狭くて薄暗い店内に足を踏み入れた僕らは、内心かなりビビリながらも、大人のふりして席についたが、その直後に店内に響きわたったのが、このアルバムの2曲目の「Das' Dat」だった。
僕の家はあまり裕福じゃなく(要は貧乏だった)、僕が家で音楽を聴いていたのは小さな卓上型のステレオ装置とラジカセだけだったから、この時JBLの巨大なスピーカーから空気を震わせて流れてきた「Das' Dat」のかっこいいテーマに、僕の脳髄は痙攣し、全身鳥肌が立った・・・というわけで、このアルバムは僕のジャズ喫茶初体験の強烈な印象とともに、はっきりと体の芯に焼きついている。


・・・と、ジャッキー・マクリーンの訃報に接して、そんなことを思い出しつつ、久しぶりにこのアルバムを聴いてみた。いや、聴く前にまずパーソネルを確認してみたら、おお、忘れていたがなかなかすごいメンバー。


Charles Tolliver(tp),Jackie McLean(as),Herbie Hancock(p),Cecil McBee(b),Roy Haynes(ds)


でもって、次に録音年を見ると1964年。えっ、64年だったのか? ガキの頃は、54年と64年のサウンドの違いもわからず、ただ「かっこいいなぁ〜!」と聴いていたのだろうが、このあたりのジャズ・シーンはモードとフリー・フォームが微妙なバランスでしのぎを削っていた時代。マクリーンにとっては苦戦を強いられた時代だったろう。で、64年といえば、ハンコックがマイルスのコンボで、『Four' & More』と『My Funny Valentine』のリンカーン・センター、東京やベルリンのライブと、怒涛の快演やらかしていた頃じゃぁないか!


で、聴いてみると、やはりモード調の演奏がほとんど。マクリーンは結構コルトレーン・ライクなフレーズやちょっとフリーキーなトーンで善戦するが、このメンバーでモードをやらせたらハンコックの独壇場になるのは目に見えていて・・・実際そうなっている。
そんなモーダルな曲が多い中で、「Das' Dat」はファンキー&ブルージーなマクリーンのオリジナル。テーマはAABAだが、アドリブは12小節のブルース・コード。ここでは、マクリーンも比較的50年代っぽいプレイに終始しているし、ハンコックもあんまりモード処理せずにオーソドックスなブルース・コードで演っている。ってな屁理屈をたたくまでもなく、やっぱりこの曲カッコイイ!


マクリーンは逝ってしまったけれど、僕のなかでは、ガキのころの「Das' Dat」の強烈な印象とともに、僕が死ぬまで生きつづける。