(12) Quartet・Quintet・Sextet (52-54)/ Lou Donaldson

このアルバムをiTunesに取り込んだら、ジャンルはなんと「R&B」と出た。ルー・ドナルドソンは、アリゲイター・ブーガルー(1967年)がブルーノート空前の大ヒットを飛ばして以来、R&Bジャズというかソウル・ジャズというか、そういうジャンルのミュージシャンとして認知されているわけだ。


このアルバムは、52年6月(カルテット)、52年11月(クインテット)、54年8月(セクステット)の3つのセッションのカップリングである。


最初の初リーダー・セッションでのルーのアルトは、あまりに典型的なパーカー派のバッパーであり、パーカー・フレーズ乱発だが、流暢なテクニックを披露する一方で、どこか自信のなさというか、ギクシャクとした雰囲気も漂う。逆に言えば、④のブルースでのプレイのように、ピアノのホレス・シルヴァーとともに、ブルースの良いとこ取りしたシンプルな分かりやすい演奏に持っていこうとするような志向性が窺がえ、後年のルーのスタイルの萌芽を見るようでおもしろい。
僕が持っている20年近く前のCDでは、「The Things We Did Last Summer」というバラッド演奏が追加されていたが、最近のCDでは元のLP盤の曲目に戻っているようだ。


52年11月のクインテット演奏では、(録音状態もあるだろうが)このアルバムの中では一番クリアーで艶のあるルーの音が聴こえてくる。6月の演奏と比べると格段に自信に溢れた流麗なフレージングだ。もちろん、あいかわらずのパーカー・フレーズ乱発ではあるが・・・。


アート・ブレイキークインテットのバードランドでのライブで、ルーがクリフォード・ブラウンとともにハード・バップの魁として歴史に名を刻んだのは54年2月だったから、最後のセクステット演奏はこのバードランド後のセッションだ。ドラムもそのブレイキーが参加していて背後から奏者を煽るが、ルーのプレイは野太いトーンと豪放さを増してハードバップ初期の典型的なアルト演奏だ。ケニー・ドーハムも名手ぶりを披露するが、トロンボーンのマシュー・ジーという無名選手の上手さにびっくりする。ピアノのエルモ・ホープも上手いなぁ!
ここにきて、どのプレイヤーも「これでいいのだ!」的な確信がみなぎっていて、もう怒涛のハード・バップ全盛時代への突入は準備完了、ってな感じだ。


50年代の100枚リスト