ビッグバンド3枚

ドン・エリスがでたついでに、70年代あたりのビッグバンド・ジャズを3枚レヴューしてみる・・・。


Central Park North/Thad Jhones・Mel Lewis

Central Park North

Central Park North

60年代におけるカウント・ベイシー的なフル・バンド・ジャズの承継者はクインシー・ジョーンズだったと思うが、そのクインシーが一時活動を停止した時期にビッグ・バンド経営に乗り出したのがサド・ジョーンズとメル・ルイスだった。
サド/メル双頭バンドの2枚目のスタジオ録音(1969)がこのアルバム。ファンキーなジャズ・ロック・ビートを前面に出したサド・ジョーンズのアレンジがほとんどだが、僕にとって忘れられないナンバーが、リード・アルトのJerome Richardsonが作った「The Groove Merchant」。シャッフル・リズムに乗ってアーシーなブラス・アンサンブルが繰り出す、あの<<キャラメルコォ〜ン♪>>フレーズが楽しくてたまらない。スモール・コンボでは味わえない、身体ごと持っていかれるような怒涛のノリだ。


Stick It/Buddy Rich

Stick It

Stick It

経営の難しいビッグバンドを長年その圧倒的なリーダー・シップで率いた重鎮バディ・リッチ。そのリッチが、疾風怒濤のドラミングで音楽的にも有無を言わせぬリーダーシップを発揮した一枚。このバンドが70年代に残した中でも、かなりポップな色合いが濃いアルバム(1972)で、後半の「サムシング」、「アンクル・アルバート」等の子供向け?のアレンジはちょっと幻滅だが、前半のジャジーな1〜3曲目が圧巻。
①「Space Shuttle」と③「Best Coast」はジョン・ラバーバラのオリジナルで、リッチのド迫力のドラムもさることながら、パット・ラバーバラのソプラノ・サックスが一介のバンドマンとは思えないカッコよさ(この人、後にエルビン・ジョーンズのバンドのフロントを長年やってる)。それと、リン・ビヴィアーノのハイ・ノート・トランペットも超ド級。②「God Bless the Child」では、ジョー・ロマーノのアルトが全面的にフューチャーされるが、このエモーショナルなソロも一流ジャズマン顔負けの迫力だ。
それにしても、このバンドのメンバーを見るとほとんどがイタリア系のようだが、やはり、アメリカでは白人の文学はユダヤ系、音楽はイタリア系なのか?


Camereon/Maynard Ferguson

メイナード・ファーガスンというトランペッターは、はっきり言ってジャズマンとしては三流だったと思うが、楽器とバンドを景気良く鳴らすことにかけては右に出るものはなかった。このアルバム、良くも悪しくも、ファーガスン率いるハイノート喇叭軍団を中心とする体育会系フルバンドの典型となる演奏だ(1974)。
ゴスペル調のハーモニーを使ったファンキーなナンバー②「Gospel John」は、後にどっかの教会でライブ演奏して喝采を浴びたらしいが、最初のファーガスンのソロの後のブラス・アンサンブルがチョ〜かっこいい。僕は学生のころ、気が滅入ったときよくこれを大音量で慣らして憂さ晴らしをしたものだ(^o^;
ソリストでは、ブルース・ジョンストン(バリトン・サックス)のプレイが秀逸。⑧「Superbone Meets the Bad Man」で長いソロをとるが、バリトンの特徴を生かした豪放かつ懐の深い演奏だ・・・この人、今ごろどうしてるんだろう?