Don Ellis/Connection

マイルス・デイヴィスが『ビッチェズ・ブリュー』の電化サウンドを引っさげてロックの殿堂フィルモア・イーストに乗り込んだ1970年、同様にエレクトリック・サウンドを前面に押し出し、同様にフィルモアに乗り込んでヤンヤの喝采を浴びたもう一つのジャズ系バンドがあった。それがドン・エリスのオーケストラなのだが、マイルスの『At Fillmore』とは違って、『Don Ellis at Fillmore』というアルバムが(アメリカで)CD化されたのは、実に2005年、つまり今年のことなわけで・・・待ちくたびれたファンにとっては今年最大の朗報だった。
これでやっと、『Tears Of Joy (2 Cd Set)』(1971)、『Connection』(1972)に続いて70年代初頭のドン・エリスの三大傑作といわれたアルバムがCD化されたわけだが、僕は今『Don Ellis at Fillmore』は取り寄せ中(^o^;なので、今日は『Connection』について・・・。


Connection

Connection

テオ・マセロのプロデュースによるこのアルバム、テーマは明らかに同時代のロックとポップであって(それは顔面ドアップのジャケットのセンスが象徴している)、ギルバート・ オサリヴァンの「ALONE AGAIN」やキャロル・キングの「I Feel The Earth Move」といったポップ・チューン、ロック・オペラの「Super Sutar」、イエスの「Roundabout」、プロコル・ハルムの「Conquistador」等のロック・ナンバーを取り上げている。ノーマルなホーン・セクション+フレンチ・ホルン+チューバ+電化ストリングス+エレキ・ギター+キーボード(電子オルガン・・・死語)+ダブル・ドラムス+パーカッションという何でもありのごちゃ混ぜ編成と斬新なアレンジもおもしろいが、相変わらずの変拍子狂いも健在。


でも、オモチャ箱のような多彩な曲の中で異彩を放つのは、やはりエリスの唯一のオリジナル「Connection」。映画『フレンチ・コネクション [DVD]』のサウンドトラックで使われた曲だが、イントロのサスペンスフルなストリングスの絡みからドラムとパーカッションのブレイク、ディストーションの効いた7拍子系のベース・パターンに乗ってブラスの多様なオカズが絡んでドンドン盛り上がっていく。それにしても、このドラムの迫力とカッコよさは圧巻。
ロック音痴の僕はよく知らないが、ここでメインのドラムを叩いているラルフ・ハンフリーという人、このアルバム録音の直後フランク・ザッパのバンドに参加して活躍したカリスマ・ドラマーらしい。「リズムの鬼」ドン・エリスが起用したのもうなずける。この人のド迫力かつ正確無比なドラミングと、奇才ミルチョ・レヴィエフのキーボードがこのバンドの屋台骨を支えている。


70年代は『ビッチェズ・ブリュー』を起点として、マイルスの周辺にいたハービー・ハンコック、チック・コリアウェイン・ショーター、ジョー・ザビヌル、ジョン・マクラフリン等が先導して時代はいわゆるフュージョン時代を迎えるが、この時代、マイルスとは全く別のルーツからジャズの電化とロック・ビートへの接近、一種のポリ・リズムの探求へと突き進んでいたドン・エリスのバンドは、日本でももうチョットは評価されてもいいんじゃないかぁ?
マイルスは75年に長期引退に入り、ドン・エリスは78年に夭折するが、一世を風靡したフュージョンも70年代の終盤には袋小路に嵌まる。