Viva Blues! (2)

僕の好きなブルース曲の続き。今日は50年代中葉のいわゆるハード・バップ期の3曲を・・・。


Opus de Funk/Horace Silver
Opus De Jazz

ホレス・シルバーと聞くと条件反射的にFunkとかFunkyという言葉を連想するが、Funkって具体的にいったいどういう種類の音楽をいうのかと聞かれても答えようがない。要は雰囲気なのだ。が、少なくとも根っこにブルース・フィーリングがあるっていうことだけは断言できる。
この曲のシルバー自身の初演は1953年(『Horace Silver Trio』)だが、この曲の圧倒的な名演がミルト・ジャクソンの『Opus De Jazz』(1955)。当時としてはかなり長い演奏(13分以上)で、ブルースの名人ミルト・ジャクソンの縦横無尽なヴァイブを思う存分堪能できる。ハンク・ジョーンズのピアノも快調。
Opusっていう言葉は、クラシックでよくOp.・・・っていう具合に作曲家ごとの連番に使われるが、ラテン語で「作品」ぐらいの意味だろう。


The Blues Walk(Loose Walk)/Sonny Stitt
Clifford Brown & Max Roach

Clifford Brown And Max Roach』にブラウニーの名でクレディットされたが、ソニー・スティットのオリジナル。"Loose"を"Blues"と聞き間違えたのか、確信犯なのかは不明。ルー・ドナルドソンにも「Blues Walk」という曲があるのでややこしい。
スティットの初演盤は聴いていないが、このブラウン・ローチ・バンドの演奏はハード・バップ期のハイ・テンポなブルース演奏の白眉だと思う。そう、これがハード・バップ。ローチのドラミングが妙にアート・プレイキーっぽいのもそのせいか(?)
前にも書いたが、この演奏はブラウン=ローチのオリジナル・クインテット(ts:ハロルド・ランド)最後のセッションでの演奏で、各人のチームワークも完璧。
ブラウニーとランドの、4バース→2バース→1バース→2拍バース(?)という息の合った掛け合いが絶妙だ。この2拍バースというはなれわざの後、エンディング・テーマに入るが、ブラウニーが入り損ねたため、もう1本別テイクが録られた。この別テイクは(『More Study in Brown』に集録されている)、ランドやリッチー・パウエルの出来は甲乙付けがたいが、ブラウニーのソロはもうひとつ。珍しく集中力の切れたブラウニーを聴くのもまた面白い。


Cool Struttin'/Sonny Clark
COOL STRUTTIN' '99

マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』と、このソニー・クラークの『クール・ストラッティン』は、日本では昔から超名盤としてあまりに人気が出すぎたので、ちょっとジャズを聴き込んだ上級者(?)の中には、「こんなアルバム、本場アメリカじゃぁもう全然相手にされてないんだ」と物知り顔で言う不心得者がいる。エラリー・クイーンの『Yの悲劇』を「欧米では評価が低い」と言って貶める輩と同じだ。
確かにソニー・クラークはあんまり速弾きとかできる人じゃないし、テクニックはいまひとつだが、それでもBlue Noteで長年重用されたのは、その作編曲の能力と独特のブルース・フィーリングの賜物だろう。
誰がなんと言おうと、やはりCool Struttin'はハード・バップ期の代表的なブルースの名演だし、このアルバム・ジャケットはBlue Noteの最高傑作のひとつだ。
クラークやアート・ファーマーのソロも好調だが、特にジャッキー・マクリーンのアーシーなアドリブが圧巻、マクリーン節炸裂!
もちろん、この快演を支えるリズム隊はチェンバースとフィリー・ジョー。