ドン・エリス Don Ellis

Live at Monterey

Live at Monterey

フレンチ・コネクション」がらみで、ドン・エリスのことを思い出した。
彼も、夭折するトランペッターの例に漏れず、44歳の若さで逝ってしまったが、60年代後半〜70年代前半の混迷するジャズの状況に、彼のビッグ・バンドが投じたインパクトは歴史的にも軽視できないはずだ。
僕は昔ドン・エリスが結構好きで、LPも5〜6枚持っていたが、日本ではCDでの再版が遅々として進まず、国内ではこの『ライブ・アット・モンタレー』を含め3・4枚しか出ていない。アメリカでも事情は同様だったが、ここ数年再評価されだしたようで、『Tears of Joy』や『Connection』、『At Fillmore』といった名盤が次々CD化されている。さらには、今まで幻だった『フレンチ・コネクション1&2』のサウンドトラック(グラミー賞のジャズ部門ベスト・ジャズ・アレンジメント賞を獲得)が限定プレスで発売されるなど、ここにきてドン・エリスを巡る状況が活況を呈しているようだ。
実は、今日何枚かCaimanで注文してしまったのだが、その辺の話はモノが来てから話すとして、今日は『モンタレー』のお話。

ドン・エリスが32歳で編成したビッグ・バンドのデビューとなった、このライブ・パフォーマンスだが、その衝撃は聴衆の反応が如実に示している。
1966年、サンフランシスコに程近いノドカな景勝地モンタレーに、半分ピクニック気分で集まった聴衆をまず驚かせたのは、壇上に上ったこのバンドの編成だろう。ホーン系の編成はノーマルだが、リズム隊はウッド・ベース3本、ドラム2セット+パーカッションにピアノ・オルガンという編成。
でもって、ジミー・ライオンズのアナウンスに続いて、変拍子の帝王(ドン)の面目躍如たる19拍子の「33 222 1 222」の演奏が始まる。1曲目が終わってヤンヤの拍手とおおぉおっという歓声が、聴衆の圧倒的な興奮を物語る。聴衆をのけぞらせたのは、変拍子の実験的な奇抜さなどではもちろんなく、猛烈なスウィング感に満ちたリズムと高度なアンサンブルだったはずだ。2曲目の直前にジェット機の轟音がアナウンスを中断させるが、これも何だかひとつの景気付けのように聞こえてしまう。
他の曲も5拍子や9拍子といった変拍子の曲ばかりだが、アクセントの位置を変化させることによって一種のポリリズムを生んでいる。このリズム感覚に匹敵するのは数年後のマイルスのグループぐらいじゃないだろうか?
ということで、最後の興奮にみちた歓声からは、偶然とんでもない出来事に立ち会ってしまった聴衆の驚きと満足が湯気を立てている・・・。