夜の大捜査線

先週は中耳炎やら出張やらで、音楽もヴィデオもほとんど見聞きできなかったが、今日やっと、先日録画した刑事モノ第2弾『夜の大捜査線』を見た。
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昨今はほとんど黒人天下のハリウッドだけれど、『夜の大捜査線』(1967)という映画が公開されたのは、キング牧師が暗殺される数ヶ月前だったらしい。その時系列で考えると、この映画は今では信じられないほどアブナイ映画だったのだし、逆に言えば、ピークに差しかかっていた黒人運動の強烈なパワーも背後に感じられる。

『卒業』や『俺たちに明日はない』などの新手の映画を押しのけて、67年度アカデミー賞の「作品賞」、「主演男優賞」など5部門を受賞したが、シドニー・ポワチエの主演男優賞でもロッド・スタイガー助演男優賞でもなく、「ロッド・スタイガーの主演男優賞」というところが、この映画の微妙なステイタスを物語っていそうだ。

しかし、同年に同じくシドニー・ポワチエ主演で作られた『招かれざる客』などと比べれば、人種差別といった深刻な社会問題はあくまで背景レヴェルで、メインのプロットは、南部の白人警察署長と北部の黒人エリート刑事、この二人の和解のプロセス。思えば、これは「喧嘩→友情」という青春映画の一つのパターンで、そこが重たいテーマをエンタメ化する軸になっている。

でもって、音楽はクインシー・ジョーンズだ。恩師のレイ・チャールズに歌わせた主題歌(IN THE HEAT OF THE NIGHT)も圧巻だが、南部のケダルイ夜の雰囲気を、かなり泥臭いブルースやR&Bを多用して描写する。時々聴こえてくるファンキーなフルートはローランド・カークだったりするし・・・。
ブラック・ミュージックのルーツを知ってるクインシーだからできた、スコアの山だ。