The Days of Wine and Roses
- アーティスト: オスカー・ピーターソン・トリオ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2003/04/23
- メディア: CD
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中でも2曲目の「酒とバラの日々」が快演だが、、今日はあんまり書くことがないので、「酒バラ」の話でもしようかな・・・。
■酒とバラの日々(Days of Wine and Roses)
1962年にヘンリー・マンシーニが書いた同名映画の主題歌だが、アカデミー賞の主題化賞をとったこの曲は、以後ジャズ奏者たちに最も好まれるスタンダードのひとつになった。
マンシーニについては以前どこかで書いたので、今日は歌詞の話。
この曲の詩を書いたジョニー・マーサーも、超ド級のソング・ライターで、数限りないスタンダード曲(何百曲?)を書いているが、マンシーニとのコンビでは「ムーンリバー」、「酒とバラの日々」、「シャレード」の映画主題歌3レンチャンが有名。
この”Days of Wine and Roses”というフレーズは、実は19世紀末のデカダン詩人Ernest Dowson(1867-1900)の詩に由来している・・・という薀蓄は僕の専売特許だと思っていたら、『ジャズ詩大全』*1という本でちゃんと解説されていて、ダウスンの原詩が和訳付きで紹介されている。
The days of wine and roses
They are not long
The weeping and laughter
Love and desire and hate
I think they have no portion in us
After we pass the gate
酒と薔薇の日々
楽しき日々は短い
涙と笑い
愛と欲望と憎悪
だがその命も
われらが時間の扉を通り抜けるまで
ところが、この引用はどこでどう間違ったか知らないが、明らかに原詩と違う。これをそのまま孫引きしているホームページやブログも幾つか見かけたので、この際異を唱えておこう。
ほんとうのダウスンの詩は、こうだ・・・
Vitae Summa Brevis Spem Nos Vetat Incohare Longam
(The brief sum of life forbids us the hope of enduring long
- Horace)
They are not long, the weeping and the laughter,
Love and desire and hate:
I think they have no portion in us after
We pass the gate.
They are not long, the days of wine and roses:
Out of a misty dream
Our path emerges for a while, then closes
Within a dream.
最初のラテン語のタイトルは、ホラティウスの所謂carupe diem(現在を愉しめ)という思想を言っていて、だからここでのthe days of wine and rosesは享楽主義のシンボルだ。これを、逆説的にアル中の隠喩としたこの『酒とバラの日々』という映画、以前は主題歌はいいが映画は駄作だというのが定説だったが、最近では佳作との再評価の機運が高いようだ。
その意味でも、間違った引用の一人歩きは防いでおきたいと思うわけで・・・
ほんとはマーサーの歌詞の全文も載せたいが、歌詞の全文掲載は著作権に関わるらしいので、やめておく。