ブルー・ミッチェル Blue Mitchell

ブルー・ミッチェルは、ホレス・シルバーのファンキー・スタイルの一翼を担ったトランペッターだったが、シルバーが抜けた後のバンドを引き継いだとき雇ったピアノがチック・コリアだった・・・ぐらいのことしか最近では記憶されていない。
彼のラッパは、ブラウニーやリー・モーガンのようなブリリアントな音色や表現力は持ち合わせていないが、ブルージーでストレートな演奏スタイルはホレス・シルバーのコンセプトにピッタリだったのだろう。
そのミッチェルの(たぶん)唯一のワン・ホーン・アルバムが”Blue's Moods”だ。
彼のプレイ自体は、ややタンギングの甘さと音の抜けの悪さでメリハリに欠けるし、特にテンション・ノートを使うわけでもなく、素直なオン・コードで地味だがよく歌うフレーズという感じだ。
そのミッチェルのちょっと単調なプレイをフォローして余りあるのが、リズムセクションの面々。1曲目の「I'll Close My Eyes」での、ウィントン・ケリーのイントロ(たった8小節だが)のカッコ良さったらありゃしない!サム・ジョーンズの野太くて粘りがあってしかも音程の良いベースが全体を支えていて、ちょい軽めのロイ・ブルックスのドラムがこれに妙にマッチしている。で、この二人とウィントン・ケリーのバッキングの絡みが、えもいわれぬスウィング感覚を醸し出している。
というわけで、ワン・ホーンの演奏はやはりサイド・メンの良し悪しにかかっている、というお話し・・・。