マイルス・デイヴィス Miles Davis

■ラウンド・ミッドナイトとマラソン・セッション
マイルス・デイヴィスは1951年からプレスティッジと専属契約を結んでいたが、売れっ子になるに従って主に金銭的に不満が大きくなり、55年に大手のコロンビア(CBS)と契約を交わすが、この時点でプレスティッジとの間に4枚分の契約を残していた。コロンビアへの吹き込みは55年10月27日、56年6月5日・9月10日の3回、秘密裏に行われたが、これと平行して、プレスティッジへの義務を履行するために、例のマラソン・セッションを強行する。56年5月11日と10月26日の2日間で20数曲を、ぶっつけ本番、ほとんどワン・テイクで収録してしまう。
このマラソン・セッションの終了をうけて、コロンビアのセッションは『'Round About Midnight』としてやっと陽の目をみる。一方、プレスティッジの出方はまたややこしく、マラソン・セッションの音源をごちゃまぜにして、57年『Cookin'』、58年『Relaxin'』、60年『Workin'』、61年『Steamin'』という形で小出しに発売する。
クッキン リラクシン ワーキン スティーミン
と、まあ、これがラウンド・ミッドナイトとマラソン・セッションを巡る消息なのだが、自分でも時系列的に混乱してしまうので、セッション順に整理してみることにする→ここ
55年の"Ah-Leu-Cha"という1曲(+後に未発表テイクとして追加された数曲)を除けば、要するに、1956年。二つのマラソン・セッションの間にラウンド・ミッドナイトのセッションが挟まる、と考えてよい。


ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)を従えたマイルス初のオリジナル・クインテットによるこれらの演奏は、コルトレーンのテクニック上の上達を除けば、コンセプトも演奏レヴェルもほぼ同一線上にあるといっていいのだが、何故か『'Round About Midnight』というアルバムだけが異質な感じを受ける。なんでだろう?

録音の質の違いもあるだろうが、大きいのはやはり"'Round Midnight"という1曲のインパクトだ。他の一連の曲がサラッとしたヘッド・アレンジだけでやっているのに比べ、この曲だけは明らかに綿密なアレンジが施されている。実は、(昔は知られていなかったが)このアレンジはギル・エヴァンスのものだ。というか、ギルがヴォーカルとフルバンドのために書いていたアレンジを、ちょうどギルのアパートに遊びに行っていたマイルスが拝借して、2管用に練り直したというのが真相らしい。マイルスのテーマ吹奏からコルトレーンに引き継ぐあたりのドラマチックなアレンジが圧巻だ。


というわけで、これは僕の頭の整理のために書いたので、どうでもいい話なのだが・・・