クリフォード・ブラウン Clofford Brown
■ラッパ吹きの夭折
ジャズの歴代のトランペッターたちは、何故か死神に愛されたらしく、多くの名手たちが夭折の宿命を背負っていた。幾つか例を挙げれば・・・
・ビックス・バイダーベック(28歳) 恐らくアルコールが原因で死亡。
・ファッツ・ナヴァロ(26歳) 結核&麻薬。
・クリフォード・ブラウン(25歳) 自動車事故。
・リー・モーガン(33歳) 妻に射殺される!
・ウディ・ショウ(44歳) エイズだったが地下鉄事故で片腕切断が致命傷。
中でも、クリフォード・ブラウンのあまりに早い死(1956)は、「もし生きていたら・・・」の紋切り型がよく似合う。でも、不幸中の幸い、ブラウニーは死ぬ前の約4年間に夥しい録音を残してくれた。しかも、パリでのワン・ホーン・セッションからマックス・ローチとの双頭クインテット、ウィズ・ストリングス、ジャム・セッション、コンサート・ライヴ、そしてヘレン・メリルやサラ・ボーンとの歌盤・・・etc.と、多種多様なセッションを含んでいる。名演でない演奏は1つもないが、あえて2つのアルバムを挙げてみる。
■It might as well be spring
- アーティスト: クリフォード・ブラウン
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2003/06/25
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迸る歌心に満ちたメロディーラインも絶妙だが、2ビートからちょっとスウィンギーな4ビートへ、そして倍テンポ乗りへと変幻自在に飛翔しまくる芸達者ぶりは、23歳としてはほとんどヒンシュクものといっていい名人芸だ。うますぎる。
■Flossie Lou
- アーティスト: ブラウン=ローチ・クインテット,クリフォード・ブラウン,マックス・ローチ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2002/05/29
- メディア: CD
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このユニットのフロントとして、ランドとロリンズのどちらが相応しかったのか?という議論は喧々諤々だが、このセッションでの当のブラウニーは、すでに名人の域にあった西海岸の頃に比べても、さらに格段に進歩している。どこまでいくの?という感じだ。音色もタンギングもアドリブのアイデアも歌心も完全無欠である。
僕が持っているエマーシーのコンプリート盤では、Flossie Louのテイクがリハーサル・テイクやフォールス・テイクを含め7テイクも入っているが、ブラウニーのソロは全て違ったアイデアで構成され、正にブリリアントなトーンと次々に湧き出る流麗なフレーズは、どれを取っても甲乙付けがたい。
「ある人を大いに尊敬しながら、大いに愛することはできない」というようなことを、ラ・ロシュフコーが書いていたが、村上春樹にとってもブラウニーは、「留保のない敬意を捧げても、溺愛はできない」プレイヤーだったようだ。「完全無欠」がブラウニーの唯一の欠点だったというわけだ。
が、少なくとも1956年の時点で、ブラウニーを超えるインプロヴァイザーは世界中に一人もいなっかたという紛れもない事実は、このアルバムを聴けばどうしようもなくニョジツだ。