(5)The Genius of Bud Powell / Bud Powell (50-51)

ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル+2

ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル+2

50年代の前半はSPからLPへの過渡期だったので、僕たちが現今聴いているCDのアルバムは、もともとSP用に録音した音源を幾つかカップリングしたLPが基になっている場合が多い。バド・パウエルの場合も、全盛期の1950年前後の録音を基にしたアルバムは、ほとんど2〜3のセッションの寄せ集めだから、演奏そのもの以外に、このカップリングの具合でずいぶん好みが分かれるような気がする。
で、僕も1枚を選ぶのに悩んでしまったのだけれど、この際、ツベコベ言わずに、この時期のパウエルは下記の4枚を聴くべし、ということにしておく。


バド・パウエルの芸術 ①『バド・パウエルの芸術』(47-53) Roost
すべてピアノ・トリオ演奏で統一されてはいるが、2つのセッションの間に5年ものタイム・ラグがあって、どうしてもパウエルにとって致命的だった歳月の流れを感じながら聴かざるをえない。47年のセッションは、初リーダー・セッションにしてその後のあらゆるピアノ・トリオ・スタイルを決定づけた金字塔的な録音。一方、53年のほうはテクニックも迫力もやや陰りを見せはじめていて、逆に円熟味を帯びてるのどうのと言っても、所詮47年の快演には一歩譲る。


ジャズ・ジャイアント ②『ジャズ・ジャイアント』(49-50) Verve
これも49年と50年のピアノ・トリオ演奏(2曲のピアノ・ソロを含む)で、パウエルのプレイはかなり先鋭で強烈だが、マックス・ローチ(ds)とレイ・ブラウン(b)のバッキングによって均衡の取れたトリオ演奏を維持している。惜しむらくは、50年の録音が原盤の状態がかなり悪いようで、音質的には最悪。


ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1 ③『The Amazing Bud Powell, Vol.1』(49-51) Blue Note
このアルバムについては以前レヴューしたので、多言しない(2005-09-10 - and i am dumb参照)。半分は49年のファッツ・ナヴァロソニー・ロリンズとの”喧嘩セッション”、もう半分はあの「ウン・ポコ・ローコ」の3テイクを含むピアノトリオ演奏。僕としては、『アメイジングVol.2』の中の演奏とうまく組み合わせてピアノトリオだけのアルバムにすれば、完璧な1枚になったのになぁ、などと思ったりして・・・。


④『The Genius of Bud Powell』(50-51) Verve
でもって、一応今回の1枚に挙げたのがこのアルバム。50年のレイ・ブラウン(b)とバディー・リッチ(ds)とのトリオが4テイク。あとは全部51年のソロ・ピアノ演奏。バディー・リッチはよくバップ・ミュージシャンとの相性云々を言われるが、超絶スピードの「Tea for Two」のブラッシュ・ワークはついて行くのがやっと。まあ、このスピードでは誰でもそうか?
でもって、もうドラムもベースもいらんわい、とばかりにソロで暴れまくる「Parisian Thoroughfare」や「Just One of Those Things」がすごい。何かに憑かれたように、あるいはピアノに怒りを叩きつけるように弾きまくるパウエルの姿が、何故かひどく物悲しい。