アート・ペッパー Art Pepper

モダン・アート

モダン・アート

アート・ペッパーといえば、日本では『ミーツ・ザ・リズムセクション』でのマイルス・リズム隊との共演が圧倒的な人気みたいだ。もちろん、西と東の名手たちが一期一会的に繰広げた名演っていうのも素晴らしいが、僕的には、やっぱり、アート・ペッパーにはラス・フリーマンがよく似合う。フリーマンのちょっと朴訥でポロンポロンと1音づつ弾むような屈託のないピアノが、僕にとっては50年代の「西海岸」だ。フリーマンが入ると、どんなバンドもこの「西海岸」の雰囲気に染まってしまう。
この modern art でも、1曲目の「Blues In」は珍しいピアノ・レスの哀調に満ちたブルースだが、2曲目からはフリーマンが登場して、全員が彼の独特のスウィング感に支配されてしまう。はっきり言ってヘタッピなのに、この圧倒的な存在感はなんなんだろう?

でもって、アート・ペッパーは、何よりも楽器演奏に関して超一流のプロだった、と久しぶりにこのアルバムを聴いて思う。昨今のサックス吹きが学ぶべきは、ペッパーの執拗なタンギングかもしれない。アフタービートでのきちんとしたタンギングが、ジャズの楽器演奏の基本だ。
最初の刑務所生活を終えて、56年〜58年ごろがアート・ペッパーの絶頂期といわれるが、この時期だってアートは筋金入りのジャンキーで、いつも身体も頭もヘロヘロだったはずだが、一旦楽器を持つと絶対に音を垂れ流しにはしない。一音一音をきちんと自分の意思と技術で操作している。つまり、プロなのだ。